n8nとZapierは、どちらも業務を自動化するためのツールですが、設計思想や料金体系、得意な用途が大きく異なります。この記事では、両者の違いを料金、機能、使いやすさなど多角的に比較し、どちらを選ぶべきかを解説します。
n8nとZapierの概要
まずは両ツールの基本情報を確認しましょう。
n8nとは
n8n(エヌエイトエヌ)は、2019年にドイツで開発されたワークフロー自動化ツールです。オープンソースで提供され、セルフホスト(自社サーバー運用)とクラウド版の両方を選択できます。
- オープンソース(Fair-code License)
- セルフホストなら実行回数無制限
- 500以上のサービス連携
- ノードベースの視覚的なワークフロー構築
- コードによる拡張が可能
Zapierとは
Zapier(ザピアー)は、2011年にアメリカで誕生したクラウド型の自動化プラットフォームです。世界で最も利用されているワークフロー自動化ツールの一つで、非エンジニアでも簡単に使える操作性が特徴です。
- 完全クラウド型(セルフホスト不可)
- 8,000以上のアプリと連携
- 直感的なステップバイステップ形式のUI
- 豊富なテンプレート
- 日本語サポートあり
比較表:n8n vs Zapier
| 項目 | n8n | Zapier |
|---|---|---|
| 料金 | セルフホスト:無料 Cloud:€20〜/月 |
無料(100タスク/月) 有料:$19.99〜/月 |
| 課金単位 | ワークフロー実行回数 | タスク数(ステップ単位) |
| 連携サービス数 | 500以上 | 8,000以上 |
| セルフホスト | 可能(推奨) | 不可 |
| 複雑なワークフロー | 得意(条件分岐、ループなど) | 基本的(有料で拡張) |
| 学習コスト | やや高い | 低い |
| 日本語対応 | UI英語のみ | UI日本語対応 |
| AI連携 | AIエージェント構築可能 | AIオーケストレーション機能 |
| コード拡張 | JavaScript/Python対応 | コードステップあり(制限的) |
| 向いている人 | 技術者、コスト重視 | 非エンジニア、手軽さ重視 |
料金比較
n8nとZapierの最も大きな違いの一つが料金体系です。
n8nの料金
| プラン | 月額 | 実行回数 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| セルフホスト | 無料(サーバー代のみ) | 無制限 | 自社サーバーで完全管理 |
| Starter | €20(約3,200円) | 2,500回 | クラウド版の入門プラン |
| Pro | €50(約8,000円) | 10,000回 | 本格運用向け |
| Enterprise | 要問い合わせ | 無制限 | 大規模組織向け |
ポイント:n8nの課金単位は「ワークフロー実行回数」です。1つのワークフローが何ステップあっても、1回の実行で1カウントです。
Zapierの料金
| プラン | 月額 | タスク数 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Free | 無料 | 100タスク/月 | 2ステップZapのみ |
| Professional | $19.99〜(約3,000円〜) | 750タスク〜 | マルチステップ対応 |
| Team | $69〜(約10,500円〜) | 2,000タスク〜 | チーム共有機能 |
| Enterprise | 要問い合わせ | 100,000タスク〜 | エンタープライズ機能 |
ポイント:Zapierの課金単位は「タスク数」です。ワークフロー内の各ステップ(アクション)が1タスクとしてカウントされます。
コスト比較の具体例
1日100回実行する5ステップのワークフローを1ヶ月運用した場合を比較します。
n8n(セルフホスト)の場合
- ワークフロー実行:100回 × 30日 = 3,000回
- コスト:VPS代(約1,000円/月)のみ
Zapierの場合
- タスク消費:100回 × 5ステップ × 30日 = 15,000タスク
- 必要プラン:Team以上(約$200/月 = 約30,000円)
このように、複雑なワークフローを高頻度で実行する場合、n8nのコスト優位性は圧倒的です。
機能比較
連携サービス
Zapierの強み
Zapierは8,000以上のアプリと連携可能で、これは業界最多です。日本のサービス(Chatwork、kintone、freeeなど)との連携も充実しています。
n8nの特徴
n8nの公式連携は500種類以上ですが、HTTPリクエストノードを使えばAPIを持つあらゆるサービスと連携可能です。技術力があれば連携先は事実上無限です。
ワークフローの複雑さ
Zapierの制限
- 無料プランは2ステップのみ
- 条件分岐(Paths)は有料プラン
- ループ処理は限定的
n8nの強み
- 条件分岐、ループ、エラーハンドリングが標準機能
- ワークフローの分岐・合流を自由に設計
- サブワークフロー(別ワークフローの呼び出し)対応
AI機能
Zapierのアプローチ
Zapierは「AIオーケストレーション」を打ち出し、複数のAIを連携させる機能を強化しています。AI搭載のZapビルダーでワークフロー作成をAIがサポートします。
n8nのアプローチ
n8nは本格的なAIエージェントの構築が可能です。AI Agentノードを使い、LLMにツールを与えて自律的に動作するエージェントを構築できます。
拡張性
Zapier
- コードステップでJavaScript/Pythonを実行可能(制限あり)
- Webhookでカスタム連携
- 基本的にクラウド内で完結
n8n
- Functionノードで自由にJavaScriptを実行
- カスタムノードの作成が可能
- セルフホストなら環境を完全にカスタマイズ
- ワークフローをJSON形式でエクスポート/インポート
使いやすさ比較
学習コスト
Zapier
- ステップバイステップのウィザード形式
- UIが日本語対応
- 豊富なテンプレート
- 初心者でも5分で最初の自動化を作成可能
n8n
- キャンバス形式でノードを線でつなぐ
- UIは英語のみ
- セルフホストの場合はサーバー構築が必要
- 慣れれば強力だが、最初は学習コストがかかる
デバッグのしやすさ
Zapier
各ステップの実行結果をタスク履歴で確認できます。エラー発生時は通知が届き、原因特定がしやすいです。
n8n
ワークフローをリアルタイムでテスト実行でき、各ノードの入出力データを視覚的に確認できます。デバッグのしやすさではn8nが優れています。
セキュリティ比較
データの取り扱い
Zapier
- 完全クラウド型でZapier社のサーバーを経由
- SOC 2 Type II認証取得
- Enterprise版ではより高度なセキュリティ機能
n8n
- セルフホストなら自社サーバーで完結(データ外部送信なし)
- 機密データを扱う場合に有利
- ただしセキュリティ管理は自己責任
どちらが安全か
セキュリティ要件が厳しい場合(金融、医療、機密情報など)は、n8nのセルフホストが推奨されます。一般的な業務用途であれば、Zapierのマネージドセキュリティで十分です。
どちらを選ぶべきか
Zapierがおすすめな人
- プログラミング知識がない、または最小限にしたい
- 日本語UIで操作したい
- シンプルな自動化(1対1のアプリ連携)が中心
- すぐに始めたい、サーバー管理はしたくない
- 日本のSaaSサービスと連携したい
- チームで共有して使いたい
n8nがおすすめな人
- コストを抑えたい(大量実行や複雑なワークフロー)
- 複雑な条件分岐やループ処理が必要
- AIエージェントを構築したい
- 独自APIや社内システムと連携したい
- データを自社環境に留めたい
- 技術的なカスタマイズをしたい
選び方のフローチャート
- 技術力はあるか?
- なし → Zapier
- あり → 次へ
- コストを最小化したいか?
- はい → n8n(セルフホスト)
- いいえ → 次へ
- ワークフローは複雑か?
- シンプル → Zapier
- 複雑 → n8n
- 機密データを扱うか?
- はい → n8n(セルフホスト)
- いいえ → どちらでもOK
併用するという選択肢
n8nとZapierは排他的な選択ではありません。併用する方法もあります。
- Zapierで小さく始める:無料プランで自動化の効果を確認
- 複雑化したらn8nに移行:コストや機能の限界を感じたら切り替え
- 用途で使い分け:シンプルな連携はZapier、複雑な処理はn8n
よくある質問
Q. 完全な初心者にはどちらがおすすめですか?
A. Zapierをおすすめします。日本語UI、豊富なテンプレート、ステップバイステップのガイドがあり、5分で最初の自動化を作成できます。n8nは便利ですが、最初の学習コストがかかります。
Q. 月額コストを最小限にしたい場合は?
A. n8nのセルフホストが最もコストパフォーマンスが高いです。VPS代(月500〜1,000円程度)のみで実行回数無制限です。技術力がない場合でも、n8n Cloudのトライアル(14日間無料)で試すことをおすすめします。
Q. ZapierからN8nへの移行は難しいですか?
A. ワークフローの再構築は必要ですが、考え方は共通しています。Zapierで作った自動化ロジックはそのままn8nに移植できます。移行ガイドやコミュニティのサポートも充実しています。
Q. 日本のサービス(Chatwork、kintone、freeeなど)との連携はどちらが良いですか?
A. Zapierの方が日本のSaaSサービスとの公式連携が充実しています。n8nでも連携可能ですが、HTTP Requestノードを使ったAPI連携が必要になる場合があります。
まとめ
n8nとZapierは、どちらも優れたワークフロー自動化ツールですが、設計思想が異なります。
| 観点 | n8n | Zapier |
|---|---|---|
| コスト | ◎(セルフホストなら無料) | ○(無料プランあり、大量利用は高い) |
| 使いやすさ | ○(慣れれば快適) | ◎(初心者に優しい) |
| 連携サービス | ○(500+、API拡張で無限) | ◎(8,000+) |
| 複雑なワークフロー | ◎ | ○ |
| AI機能 | ◎(AIエージェント構築可能) | ○(AIオーケストレーション) |
| セキュリティ | ◎(セルフホスト可能) | ○(クラウドのみ) |
結論
- 「手軽に始めたい」「シンプルな連携」 → Zapier
- 「コスト重視」「複雑な処理」「AI活用」 → n8n
まずはZapierの無料プランまたはn8n Cloudの14日間トライアルで試してみて、自分の用途に合うかを確認することをおすすめします。
n8nの詳しい使い方は、料金プランについてはも参考にしてください。また、n8nとMakeの比較についてはで解説しています。

